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ExpSS21 実験社会科学の概要

基本構成

 本領域研究全体を推進するに当たっての基本的考え方は,以下の4点にまとめられる.
  1. 個別研究で,各テーマに関して世界トップ水準の研究を推進する.
  2. 計画研究の対象をA01「制度設計と評価」およびB01「人間モデルの構築」に分け,C01理論班と総括班の研究活動コーディネーション活動を通して,研究班相互の連携を促進する.
  3. 社会科学における実験研究の独創的活用を促進するために公募研究を重視し,優秀な公募研究の芽を育成するため,総括班が中心となって研究・広報活動のコーディネーションを行う.
  4. 研究・教育に関わる基礎知識を提供するためにサマースクールを開講する.またシンポジウム,公開講演会,ホームページ上での研究紹介などの活動を通して実験研究の意義を一般に向けて幅広く発信する.
これらの基本方針を実現するために,以下の基本戦略を採用する.

 

 

  1. 総括班に資源を集中し,全体計画の作成と統括のみならず,個別研究班で行われる研究活動のコーディネーション,個別研究班での実験実施に必要となるプログラミング作業の支援,4年次からの公募研究へ向けた教育・広報活動のコーディネーション,海外の研究拠点との間の情報交換,研究交流の促進などを担当する.
     
  2. A01「制度設計と評価」に関しては,「市場班」「組織班」「政治班」「社会班」の4つの班が,B01「人間モデルの構築」に関しては「意思決定班」「集団」「文化班」の3つの班が研究活動を進める.A01の4つの研究班は,大まかには,それぞれ経済学,経営学,政治学,政治経済学(および社会学)に対応するが,それぞれの研究対象は必ずしも既存の学問分野の枠にとらわれるわけではない.B01の3つの研究班は,いずれも人間ないしヒトの認知,心理,行動を研究対象とするが,それぞれが,構築すべき人間モデルの異なる側面を研究対象としている.具体的には,「集団班」は生物種としてのヒトとして人間を捉え,ヒトが集団環境に適応するにあたって獲得した行動特性のモデルを生物学のモデルに依拠しながら構築する.これに対して「文化班」は,ヒトが社会を作ることで人間としての特性を獲得する点に着目し,環境(特に社会的環境)を作る存在としての人間の心の性質を研究対象とする.そして「意思決定班」は,個人の意思決定プロセスの詳細な記述的研究を進めることで,これら2班の研究でなされる心の基本的特性が具体的にどのような心の働きとして作用するかを明らかにすることにより,人間性研究をA01の4つの班における制度設計と評価の研究と結びつける役割を果たす.このように,人間性モデル研究は,学問分野にとらわれないで,ヒトとしての人間性,社会的存在としての人間性の両面から研究を進め,その上に立って,社会的環境の中での個人の意思決定プロセスを分析を進める.これに対して制度設計と評価の研究は,人間社会の諸制度に対応した形で研究班を構成し,互いに連携しながら,諸制度の下に置かれた人間の行動の分析を進める.
     
  3. 本領域全体にとり極めて重要な役割を果たすのは,A01研究とB01研究との間の積極的な研究交流である.A01研究はB01研究のための材料を提供し,B01研究から自分たちの研究成果としての理論と結果との乖離の説明原理(説明そのものではない点に注意)の提供を期待できる.この研究交流の必要性はこれまでもしばしば指摘されてきたが,必ずしも大きな成功が得られたとは言いがたい.その一つの大きな障害は,人間研究者(主として心理学者)と制度研究者(主として社会科学者)との間に,互いの研究に対するレスペクトを欠いていた点にある.本領域を構成する研究チームは,この点に関して世界的にも極めてユニークであり,互いの研究に対する深い理解と敬意を共有している.また,A01制度研究とB01人間研究との積極的な交流を促進し,またその交流を一層意味あるものとするために,C01として「理論班」を独自に設定した点は,領域全体の意義を高める上で大きな役割を果たすものと期待している.その理由は,A01研究とB01研究との交流を,たんに具体的な知見の解釈のレベルにとどめるのではなく,その背後にある理論的な意味に焦点を当てるように交流を導く役割が,理論班に求められているからである.理論を媒介とした交流をA01研究とB01研究との間で促進することが,本領域全体の一つの大きな特色である.
     
  4. A01研究とB01研究との間の研究交流は,基本的に2つのルートを用いる.一つは,上図に示した「領域全体の基本構成」の黒線によって結ばれているルートであり,総括班が理論班と共同で個々の研究班の行う研究の成果を評価し,必要に応じてシンポジウム,ワークショップ等の開催を通して,重要な研究成果の領域全体での共有を促進する.第二のルートは同図の赤線によって結ばれているルートであり,A01研究とB01研究の枠を超えて研究対象・関心の近い研究班の間で直接の研究交流を行うものである.同図には研究対象・関心の近い研究班の現在の関係が示されているが,計画研究終了時までには,すべての研究班の間の関係を密接なものにすることが目指されている.
     
  5. 発足時の計画研究に含まれる経済学,経営学,社会学,政治学,社会心理学,文化心理学の分野以外の社会科学の諸分野における実験研究の促進を通して,また既存分野における新たな独創的研究の創出を通して,社会科学における実験研究の新しい展開を図るため,20年度に公募研究を募り, 21年度から公募研究を開始する(詳しくはこちら).19年度から実験研究に興味を持つ社会科学研究者(若手に限らず,すべての研究者)に対してサマースクール等のかたちで実験研究のための基礎訓練と,実験実施のためのノウハウの提供を行うと同時に, 20年度の公募に先立ち,社会科学者を対象としたシンポジウムを開催し,広範囲の社会科学者に対して実験研究への関心を高める.また,新たに実験研究を開始するにあたり独自の実験施設の設置が困難な研究者に対しては,本領域研究者の実験施設の利用を可能とする.
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