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ExpSS21 実験社会科学の概要

意思決定班

研究課題名: 意思決定過程のマイクロ分析

 伝統的な経済学では,人間の意思決定は自己利益追及に関して合理的で,時間と場面状況を通じ常に一定であるという大前提の上に,さまざまな理論研究や実証研究が行われてきた.しかし,行動社会的状況における人間の意思決定は,必ずしも経済合理性を持つとは限らず,また一貫していないことがこれまでの意思決定過程研究でわかっている.本研究は,人々の意思決定過程の特徴を,動物に関する行動分析学の視点と行動意思決定論の視点を統合しながら,さらに詳細に把握することを目的としている.本研究では,社会的状況における意思決定の微視的過程を種々の基礎心理実験と調査を通じて解明し,予測可能な心理計量モデル,その数理心理モデルを構成し,さらに,この数理心理モデルを実証的観点から検討する.
 本研究では,意思決定過程の以下の3段階から検討する.まず第1が,意思決定の事態を人々がどのように認識するかという意思決定問題把握の段階(決定フレームの構成の段階),第2が直面する選択肢に対する評価の段階,第3が実際に選択肢を採択する選択の段階である.本研究では,この3つの意思決定過程の段階に応じて次のような具体的な研究目標を置き,眼球運動測定や行動観察などを用いて下記の実験研究を行う予定である.
 1.意思決定問題把握段階の検討 (1)意思決定場面での決定フレームの言語プロトコール解析,(2)言語プロトコール分析に基づく決定フレームモデルの構成と心理実験,(3)決定フレームと個人の意思決定行動の関係の調査,を行う予定である.
 2.評価段階の検討 (1)リスク評価と意思決定の研究,(2)曖昧性下での不確実性評価と意思決定の研究,(3)無知下での不確実性評価と意思決定の実験研究を中心に行う予定である.
 3.選択段階の検討 (1)選択行動に影響を及ぼす要因の研究,(2)時間割引に関する実験的研究,(3)注意と選択の関係に関する実験研究,(4)相互作用における意思決定に関する実験研究を中心に行う予定である.
 これらの実験をもとに,データの解析を行い,心理計量モデル,数理心理モデルを検討し,意思決定の微視的過程に関する総合的検討を行う.
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