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ExpSS21 実験社会科学の概要

組織班

研究課題名: 組織構造の分析と設計

  本研究は,「組織競争」と「組織学習」における意思決定過程の構造を解明することを目的とする.この問題は経済学と経営学の学際領域に位置づけられ,本研究は経営学の問題意識を実験経済学の手法で体系的に分析することを大きな特色とする.
 先行研究によると,例えば多国籍企業が進出国を選定するとき,自社の企業戦略や進出国の政治・経済状況よりも競合他社の動向に大きく影響されることが報告されている.また,企業の業績目標の設定過程では,市場・競合環境を含む経済学的な環境変化よりも,自社の過去経験(目標の達成頻度など)がもっとも影響することを明らかにしている.このように,現代社会における実際の企業行動は,「経済的合理性」の理論では説明できない,システマティックなずれを示す.企業や市場の現実の意思決定構造を解明するためには,それに関わる意思決定主体の"経済外的"な心理状況に注目した研究が不可欠になっているのである.
 本研究を通じ,経済と経営の両領域における社会システムと人間の現実の振る舞いとは何か,及びそこでの望ましい状態はどのように構築可能かについて,理論と実験を通じ解明したい.具体的には,まず現実の経済・経営環境をシミュレートした社会システムを作り,完全に合理的な人間ならばそこでどのような行動を取るか,理論的に予測する.次に,被験者を使った行動実験の結果とこの理論予測を比較し,そこでシステマティックな差異が観察されるならば,その心理的基盤について検討する.これらの実証的検討をもとに,実際の人間がもっている合理性の程度を反映した,意思決定主体としての人間モデルを構築する.さらに,そのような意思決定主体からなる集団にとって,より満足度が高くなる社会システム(組織内ルールなど)の理論的設計を試みる.そして最後に,この理論的に設計された新しい社会システムの性能を再び実験により確認する.
 以上のように,本研究は,「組織競争」と「組織学習」を軸に,実験手法の導入を通じ,有効な経営システムの設計に向け理工学的に接近する.
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