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ワークショップ

2008年度 第1回 理論班ワークショップ

理論班の班会議を以下のように行います。班員でないかたも、また特定領域に関わっておられないかたも、ご自由にご参加ください。なおポリコムを用いて、特定領域のいくつかの研究室では遠隔地セミナーのかたちで参加していただくことも考えています。

日時
2009年2月16日(月) 13:00-16:00
場所
東京工業大学大岡山キャンパス 西9号館7階715室
(715への行き方:9号館は西棟と東棟に分かれており、715は西棟の7階です。西棟のエレベーターを7階でおりて右手に、価値システム事務室(714)があり、715はその側にあります。)

 

報告概要
 

13:00-13:10

挨拶と事務連絡(巌佐 庸)

13:10-13:40

大槻久(東京工業大社会理工研究科、JSTさきがけ研究者)
「合理性と進化ゲームダイナミクス」

 

 経済学における最も基本的なゲーム動学は最適応答力学(best response dynamics)であり、そこでは「完全な合理性+わずかなエラー」が仮定される。一方、生物学において近年精力的に研究されている弱選択極限と呼ばれる進化ダイナミクスでは、「完全なランダムネス+わずかな合理性」が仮定される。
 弱選択極限の下での進化ゲーム解析を行い、様々な新しい理論的結果を得たのでそれを報告したい。モデルの振る舞いは最適応答力学とは大きく異なるが、不思議な事にいくつかの基礎的な結果は一致することがある。
 二つのダイナミクスの相違点と類似点を示す事で、分野間の方法論の違いに関する議論のきっかけを提供したいと考えている。

13:40-14:10

討論

14:10-15:10

伊藤秀史(一橋大学商学研究科)
「関係的ガバナンス――契約設計の視点からの理論的展望――」
 

 国家による財産・契約の保護が限定的で信頼性がない途上経済や移行経済では自明なことであるが,先進諸国においても,紛争の解決に際して法制度が用いられる頻度は低く,法律は最後の手段でしかない.言いかえれば,経済パフォーマンスにとって私的秩序 (private ordering) は重要な役割を果たしている.さまざまな私的秩序制度のうち,当事者間の長期的・継続的関係を基礎とすることによって自己拘束的 (self-enforcing) に強制される「関係的ガバナンス (relational governance)」に焦点を当て,理論的展望を行う.
 長期的・継続的関係においては,合意からの逸脱によって短期的には利益を得られても,将来の良好な関係が失われるという長期的損失のために,合意に強制力が生まれる.これはすでに繰り返しゲームの理論で分析され,よく知られたロジックである.しかし,繰り返しゲームの理論で分析されるゲームでは,通常プレーヤー間での利得の移転は考慮されていない.他方経営者インセンティブ,雇用関係,人事制度,金融契約,垂直的取引関係,インセンティブ規制などの設計に関する問題の多くは,エージェンシー関係を枠組みとする契約理論 (contract theory) によって分析されている.標準的な契約理論はスポット取引関係をモデル化しており,継続的関係に基づくインセンティブは考慮されていない.そして立証可能な変数 (当事者の義務や自然の状態) が外生的に与えられ,その変数に条件付けられた公式の契約や制度 (移転スケジュール,決定権の配分など) は裁判所によって完全に強制される (しかし,それ以外の変数に条件付けられた合意はまったく強制力がない) と仮定される.現実には法制度も不完全であり,法的な強制は契約法,裁判所の裁量,当事者の事後的な立証行動,事前の契約記述などにも依存する.公式契約・制度の不完全な強制自体の分析も重要であるが,今回は対象とはしない.
 このように当事者の義務や自然の状態が (完全に) 立証可能か立証不可能かのいずれかである状況に限定したとき,関係的ガバナンスの利点は立証不可能な情報を利用できる点にある.ただし,立証不可能でも当事者間で観察可能で共有できる情報でなければならない.そのような情報に条件付けられた合意が,長期的・継続的関係においてどのように強制されるか,また公式制度は関係的ガバナンスに取って代わる代替的関係にあるのか,それとも互いに補完しあうのか,が主要なテーマとなる.これらのテーマは標準的な契約理論の教科書ではまだ扱われていない.


15:10-16:00

討論

 

 

2名の方には、進化生物学および経営学と分野は異なりますが、広い意味で協力維持のメカニズムに関連する話題を提供していただきます。できれば生物学と社会科学とでのゲーム理論の基礎の違いや、それぞれでの展望について議論ができればと考えています。

班会議は16:00までで終了します。

その後、ゲームモデルについての大学院生による発表と議論がつづきますので興味ある方はご参加ください。

 

大阪大学社会経済研究所 西條研究室 Tel:06-6879-8582 Mail:secsaijo@gmail.com