ニュース

2026年6月18日
平岩 拓也 さん (University of Maryland) が来所されました。(滞在期間: 2026年6月18日 ~ 2026年7月27日)
2026年6月16日
ブラギンスキー セルゲイ 先生 (University of Maryland, Professor) が来所されました。(滞在期間: 2026年6月16日 ~ 2026年8月7日)
2026年6月15日
花木教授の論文が、毎日新聞の記事『ゲーム理論があぶり出す「温暖化適応」優先論のわな 希望の道も』でとりあげられました。
2026年6月15日
高橋 悠太准教授の論文"Robustly Optimal Voting Rule" (with Noriaki Kiguchi, Shinpei Noguchi) がJournal of Economic Theoryに受理されました。
2026年6月15日
Ayumu Ken Kikkawa 先生 (University of British Columbia, Assistant Professor) が来所されました。(滞在期間: 2026年6月15日 ~ 2026年6月20日)

イベント

6/22
国本 隆
Singapore Management University
社研セミナー
Locally Robust Implementation of Efficient Bilateral Trade with Correlated Beliefs
13:30 ~ 15:00 (A301)
6/23
阪本 諒
慶應義塾大学
社研セミナー
Childcare Availability, Bargaining Power, and Fertility Intentions
14:00 ~ 15:00 (Online)
6/22
The Chicago School in Experimental Economics (CSEE)
プログラム詳細
6/26
Asian Meeting of Behavioral and Experimental Research 2026
プログラム詳細
6/29
Suanna Oh
École d'économie de Paris
社研セミナー
Absent but Not Idle: the Social Roots of Demand for Flexible Work
13:30 ~ 15:00 (A301)
6/30
Etienne Wasmer
New York University, Abu Dhabi
Seminar in Macroeconomics
Employment and Skill Investment Responses to Payroll Tax Reductions
10:45 ~ 12:15 (Hybrid)
6/30
Kazuharu Yanagimoto
神戸大学
Seminar in Macroeconomics
Computing Alone: Leisure Technology Growth and Marriage Decline
16:00 ~ 17:30 (Hybrid)
7/7
Hiroyuki Kubota
University of California, Los Angeles
Seminar in Macroeconomics
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16:00 ~ 17:30 (Hybrid)
7/13
古川 知志雄
横浜国立大学
社研セミナー
Deriving Shape of Utility over Long-Horizon Wealth: An Opportunities Approach
10:30 ~ 12:00 (A301)
7/14
In Hwan Jo
早稲田大学
Seminar in Macroeconomics
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16:00 ~ 17:30
7/17
Wei-Min Hu
National Chengchi University
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
7/21
山田 憲
京都大学
Seminar in Macroeconomics
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10:45 ~ 12:15 (Online)
7/24
Erkut Y. Ozbay
University of Maryland
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
10:30 ~ 12:00 (Online)
9/4
Elaine M. Liu
Georgia State University
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
10:30 ~ 12:00 (Online)
9/18
Alistair J. Wilson
University of Pittsburgh
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
10:30 ~ 12:00 (Online)
10/19
Laura Panza
University of Melbourne
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
10/26
後藤 潤
政策研究大学院大学
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
11/16
第29回森口賞

最近の研究成果の紹介

議員、政策や公共サービスをみんなで一つ選ぶ。この「投票ルール」は、いったん採用されると何十年も、ときに世代を超えて使われ続けます。私がこの研究を始めたのは、ここに一つの難しさがあると感じたからです。ルールを設計する側は、将来それを使う人々、つまりまだ生まれてもいない世代がどんな好みを持つかを、そもそも知ることができません。オークションの設計であれば、過去のデータから人々の好みの現れ方をある程度は見当づけられますが、投票ではそうはいきません。元米国防長官ラムズフェルドの言う「知らないことすら知らない(未知の未知)」のような状況のなかで、それでもきちんと働く制度をどう作るか。これが私たちの出発点でした。
この問題に、私は東京経済大学の木口憲明さん、一橋大学の野口慎平さんと一緒に取り組みました。私たちは、好みの分布が「分からない」という状況を、起こりうる分布の幅としてとらえ、そのなかでも最悪の場合にどれだけうまくいくかを基準にルールを評価することにしました。最悪の事態に最も強い、いわば備えのよいルールを探そう、という考え方です。
私たちがルールに課した条件は、たった一つだけです。それは「正直さが得になること」、つまり自分の好みを偽って申告しても得をしない、という性質です。公平さも効率も分かりやすさも求めません。それにもかかわらず、最も強いルールとして自然に浮かび上がってきたのは、各人が一番好む案に一票を投じ、その中央(メディアン)にあたる案を選ぶ、という素朴な「中位投票者ルール」でした。
このルールは、誰の一票も対等に扱う公平さ、無駄なく望ましい結果を選ぶ効率性、そして余計な情報を求めない簡潔さを、結果としてすべて備えていました。従来の研究では、こうした望ましい性質を最初から前提として置いていましたが、私たちの場合は、それらが前提ではなく結果として現れています。さらに、人は理想から離れるほど嫌いになる、という典型的な想定よりも幅広く、両極端に振れるような好み(中途半端な公共支出よりも、低い支出か高い支出のどちらかを好む、といったケース)まで含めても、この結果は成り立ちます。
私自身がとくに面白いと感じているのは、このルールがその場その場(事後)では人々の満足の総和を最大にしないのに、不確実さを織り込んだ事前の評価では最適になる、という点です。評価のものさしを「最悪ケースの後悔(達成しえた最善との差)」に取り替えてみても、やはり中位投票者ルールが唯一の最適解として残りました。
特別な公平さや単純さを目指したわけではないのに、結果としていちばん公平で単純なものが残りました。不確実な未来に強い仕組みは、しばしば最も素朴な形をとるのだと思います。私たちのこの結果は、古くから知られる「真ん中の案を選ぶ」という素朴な仕組みに、新しい根拠を与えるものだと考えています。
不確実な時代に強い制度とはどういうものか?——投票ルールの設計から考える
著者: 木口憲明(東京経済大学),野口慎平(一橋大学),高橋悠太(大阪大学社会経済研究所)
原題:
Robustly Optimal Voting Rule
Journal of Economic Theory
プラットフォームによる市場アクセス権の最適配分問題
An example of horizontal cases under Assumption 7 would be a binary Hotelling model with convex transportation costs.
本論文では、オンライン・プラットフォーム上で財やサービスを提供する企業に対して、プラットフォームがどのような形で参加費用を徴収するのが最適なのか、またその経済厚生上の含意について研究しています。プラットフォームは、それに参加するユーザー・消費者について、入力された情報やオンライン・アクティビティの記録などから、豊富なデータを蓄えています。プラットフォームに参加することを計画する企業にとっては、どのようなデータがプラットフォームから提供されるのかは、参加するインセンティブに決定的な影響を与えますし、またプラットフォームの側から見れば、いかに提供するデータと参加費用を組み合わせてデザインするのかが重要な問題になります。特に、各消費者の情報をどの程度企業に共有するか、というのは、その後の企業・消費者間の取引にも影響しますし、消費者のデジタル・プライバシーという観点からも重要な問題です。
本論文では、「境界支配条件」と呼ぶ条件を経済環境が満たした場合、プラットフォームのデータ・デザインの問題が単純化され、結果として「もし、あるタイプの消費者を当該企業に紹介する(アクセス権を与える)場合、その消費者に関してプラットフォームの持つ情報をすべて共有する」のが最適になる、ということを示しています。このことは、その後の企業・消費者間の取引をより効率的にする一方、デジタル・プライバシーの観点からは踏み込んだポリシーになることを意味します。また論文では、市場構造(各企業が垂直的な競争関係にあるのか、水平的な競争関係にあるのか)に応じて、アクセス権の配分パターンとその経済厚生への含意を議論しています。
規制当局としては、取引効率性とデジタル・プライバシー、アクセス権の配分パターンについてのトレードオフに直面することを明らかにしました。そのトレードオフがどのような形で存在するか、について議論したことで、最適なプラットフォーム規制に対する含意を与えています。
プラットフォームによる市場アクセス権の最適配分問題
著者: 山下 拓朗,Shuguang Zhu
原題:
Optimal Design of Market Access
American Economic Journal: Microeconomics
社会科学および行動科学における再現性の調査
信頼を得るためには、公表された主張は再現可能であるべきである。すなわち、同じデー タに同じ分析を適用した場合、結果は類似している必要がある。本論文では、2009年から 2018年の間に社会科学分野で発表された約180本の論文の再現性を検証した。その結果 、53.6%の論文が正確に再現され、73.5%が概ね再現された(元の効果の15%以内、または 元のP値の0.05以内)。再現性は、他の分野と比べて政治学および経済学で高く、また比 較的新しい論文や、データ共有を義務付けている学術誌に掲載された論文において高い傾 向が見られた。本論文は、研究成果の信頼性を支えるために、論文公表時に再現性を検証 するための措置を講じる必要性を訴えて締めくくられている。
本論文は、SCORE – Systematizing Confidence in Open Research and Evidence(オープンな研究 とエビデンスに対する信頼の体系化)と呼ばれる大規模プロジェクトの一部であり、Brian Nosek教授(バージニア大学)が主導している。このプロジェクトは、約900人の共著者が 参加する大規模な国際共同研究であり、Nature誌に掲載された6本の論文から構成されて いる。
社会科学および行動科学における再現性の調査
著者: Olivia Miske,クロシャール ゲンジ ロウ,et al.
原題:
Investigating the reproducibility of the social and behavioural sciences
Nature,6521262026
大阪大学社会経済研究所(阪大社研)の花木伸行教授と Gwen-Jiro Clochard(クロシャール ゲンジ ロウ)講師が参画した世界 34 か国横断の大規模実験により、気候変動のような国際社会全体で協力が必 要な問題において、私的解決※1策が存在する社会では、不平等が拡大しやすく公共的解決※2が不安定化 するという構造的リスクが世界共通で存在することを明らかにしました。
これまでの実験研究では、小規模研究に限られており、文化的価値観や社会経済的条件の違いを横断 的に検証した研究は存在しませんでした。また、富が努力によるものか運によるものかが意思決定に与え る影響も十分に検証されていませんでした。
7,500人超が参加した実験では、「富裕層」または「貧困層」に分けられ、「全員に利益をもたらす公共的 解決策」または「自分のみを守る私的解決策」に資源を配分する意思決定を繰り返し行いました。その結果、 「富裕層」の参加者が一貫して私的解決策を選択する割合が高く、公共的解決への相対的貢献は低いこと が確認されました。この傾向は 34 か国すべてで観察され、集団全体の利益を損なうとともに、実験終了 時の不平等を大幅に拡大させました。また、富の起源(努力か運か)は意思決定に有意な影響を与えない ともわかりました。
本研究では、人々のもつ傾向が文化を超えて観察され、相互協力を促す制度が公共的解決を支える普 遍的メカニズムであることが明らかになりました。これらの知見は、国際的な気候政策枠組みや協調メカ ニズム設計に対して、「罠」を回避するための実証的根拠に基づく重要な指針と、国際交渉や政策形成に重 要な示唆を提供することが期待できます。
本研究成果は、2026 年 3 月 21 日(土)2 時に Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)に掲載されました。
私的解決策の罠
著者: Eugene Malthouse,クロシャール ゲンジ ロウ,花木伸行,et al.
原題:
The private solution trap in collective action problems across 34 nations
Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS),123(12)2026
「企業の見落とし」が実質為替レートを長引かせる
注:各商品の価格差(実質為替レート)がどの程度の理論値から乖離しているのかを示した図。集計値も 財・サービス別でも乖離が持続的に継続されることが分かる。
為替レートが動くと、同じ商品でも国によって相対的な価格差が生じる。通常の経済学では 、企業が設定する価格を正しく見直すなら、こうした差はそれほど長く続かないはずだと考えら れてきた。ところが実際には、国全体で見た実質為替レートのずれは、数年単位でしつこく残る 。これが国際マクロ経済学でよく知られた「PPPパズル」である。
本研究は、その背景に、企業が「マクロ経済情報に十分な注意を向けられない」認知能力の 限界があるのではないかと考えた。企業は価格を決めるとき、自社のコストだけでなく、マクロ 経済全体の動向も見なければならない。しかし現実には、そうした情報を常に十分に追うことは 難しく、企業は経済全体の変化を価格に部分的にしか織り込められない。この仕組みを理論モデ ルに組み込むと、個々の商品の価格差が国全体の実質為替レートの動きに引きずられ、その結果 、価格差が自己強化的に長引くことが分かった。
さらに、米国・カナダおよび英国・ユーロ圏の小売価格データを用いて検証すると、企業が 完全にはマクロ経済情報に注意を向けていないという仮説を支持する結果が得られた。推計され た注意の度合いを使ってモデルを計算すると、国全体の実質為替レートが長く持続することだけ でなく、個別商品の価格差のほうが国全体の価格差より早く縮小することを同時に説明できる。 これは、物価や為替の動きを理解するうえで、企業の認知能力の限界が重要な役割を果たしてい ることを示唆している。
「企業の見落とし」が実質為替レートを長引かせる
著者: Mario J. Crucini,新谷 元嗣,敦賀 貴之
原題:
A Behavioral Explanation for the Puzzling Persistence of the Aggregate Real Exchange Rate
Journal of the European Economic Association

Research Highlights

Robustly Optimal Voting Rule
Noriaki Kiguchi,
Shinpei Noguchi,
Yuta Takahashi
Journal of Economic Theory,
forthcoming
Optimal Design of Market Access
Takuro Yamashita,
Shuguang Zhu
American Economic Journal: Microeconomics,
forthcoming
Olivia Miske,
Gwen-Jiro Clochard,
et al.
Nature,
652
pp.126-134
2026
DOI: 10.1038/s41586-026-10203-5
Eugene Malthouse,
Charlie Pilgrim,
Daniel Sgroi,
Gwen-Jiro Clochard,
Nobuyuki Hanaki,
et al.
Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS),
123
(12)
2026
DOI: 10.1073/pnas.2504632123
A Behavioral Explanation for the Puzzling Persistence of the Aggregate Real Exchange Rate
Mario J. Crucini,
Mototsugu Shintani,
Takayuki Tsuruga
Journal of the European Economic Association,
forthcoming
wani-hakase
The university of osaka
社会経済研究所
The University of Osaka
〒567-0047 大阪府茨木市美穂ケ丘6ー1
©2026 Institute of Social and Economic Research, The University of Osaka・Photo by Shinya Yamada