第19回 社研・森口賞 受賞者


森口賞 定兼 仁 / Hitoshi Sadakane (神戸大学/ Kobe University)
論文
Multistage Information Transmission with Voluntary Monetary Transfer
講評
80年代から議論されているチープトークゲームを取り上げ、情報の送り手による明証不可能 (unverifiable) な情報の内容に応じて情報の受け手は報酬を与えることと、受け手から報酬が与えられなかった時にはチープトークゲーム特有の複数均衡の性質を用いることで送り手は受け手に対して罰則を科すことができることを利用して、二者間で複数回の情報交換が行える場合には情報伝達の精度が既存研究で提案された方法よりも改善する可能性があることを示した独創性の高い理論研究であり、極めて高く評価できる論文である。
   

森口賞 山﨑 潤一 / Junichi Yamasaki (LSE)
論文
Railroads, Technology Adoption, and Modern Economic Development: Evidence from New Data in the Late 19th - Early 20th Centuries Japan
講評
日本の近代化において鉄道が経済発展に寄与したことを、独自に構築したデータを使った丁寧な定量分析で示した研究である。開発経済、日本経済史、および地域科学の分野など、多くの分野における研究者の関心を集めることが期待される、極めて高く評価できる論文である。

   



入選 潘 聡 / Cong Pan (大阪大学 / Osaka University)
論文
Supplier Encroachment under a Two-Part Tariff Contract and Unobservable Multilateral Contracting
講評
メーカーが既存小売店舗に対して二部料金を提示できる経済環境であっても、メーカーによる小売市場への直接参入が生じうることを明らかにするとともに、その直接参入によって小売市場に企業数が増加するにもかかわらず、消費者厚生が悪化する可能性があることを、簡素な理論モデルで明らかにしている点が高く評価できる。

   



入選 今泉 允聡 / Masaaki Imaizumi (東京大学 / University of Tokyo)
論文
An Approximation Method for Discrete Markov Decision Models with a Large State Space
講評
状態空間が大きい場合には、離散マルコフ意思決定モデルの推定には時間かかったり、推定不能になる可能性があり、その問題を緩和することを目指す研究である。ベルマン方程式を数値的に解く際に計算量が多くなることに着目して、その速度を高めることで全体の計算負荷を軽くすることを実現した、動学的な構造推定の実証分析に寄与し得る良質な研究である点が高く評価できる。

   



2016年12月8日におこなわれた報告会の様子です。

森口賞内規