日本語での研究紹介


インフレ期待と調査設計


原題: Inflation Expectations and Survey Design
著者: 菊池 淳一
ISER Discussion Paper No. 1198, December 2022

 本研究は、アンケート調査によるインフレ期待の測定方法に関する研究である。インフレ期待は、目には見えないものであり、消費や投資などと違って、直接観察できないものである。そのため、「どのようにインフレ期待を測定するのか」という問いは、とても重要である。インフレ期待は、主にアンケート調査を用いて測定を行う。消費者や専門家、企業などにアンケートを行い、それぞれの将来の予想をインフレ期待の代理変数として研究などに用いる。しかしながら、調査形式や質問の言葉遣い、回答方法によって、アンケートの回答はしばしば異なる。どのようにインフレ期待を測定すべきかについては、未だ議論の余地がある。
 本研究は、アンケート調査参加者に、二種類の調査票をランダムに配ったサーベイデータを用いて、インフレ期待と調査設計の関係性を分析している。二種類の調査票では、それぞれインフレ期待を「自由回答形式」と「選択肢形式」によって調査している。それぞれの回答形式によって収集されたインフレ期待について、基本統計量や回答率、家計の属性情報との関係性などを比較・分析している。また、調査方法の違いが実際の行動に影響を及ぼすのかについても分析を行っている。
 本研究の発見は三つである。一つ目に、調査方法が異なるとインフレ期待に違いが生じることが明らかになった。二つ目に、調査票によって生じたインフレ期待の違いは、短期的な予測においてより大きく観察されることが明らかになった。三つ目に、調査設計の違いは実際の行動にまで影響を及ぼしているとは言えないことが明らかになった。



Figure 1: 自由回答・選択肢回答それぞれのインフレ期待分布

(作成)菊池淳一