日本語での研究紹介


新型コロナウイルス感染拡大に対する消費支出反応


原題: Expenditure Responses to the COVID-19 Pandemic
著者: Kikuchi Junichi, Ryoya Nagao, and Yoshiyuki Nakazono
Accepted for publication in Japan and the World Economy

 本研究は、コロナ禍における人々の消費行動を分析した研究である。コロナ禍におけ る人々の行動について、学術・実務の両方面から関心が高まっている。多くの先行研究が、 コロナ禍における消費や格差、政策効果などについて研究を行っている。
 本研究は、大規模な個票データを活用し、コロナ禍における人々の消費行動について、 高齢者層と若年層の違いを実証分析している。具体的には、「日本の家計五万人を対象に した購買データ」と「コロナ禍における生活の変化に関するアンケート調査」を接続して いる。購買データは、誰が、いつ、どこで、何を、いくらで購入したのかが分かる、いわ ゆるスキャナーデータである。スーパーやドラッグストアで買い物をするような商品を対 象に、購買情報を収集しているデータである。アンケート調査は、購買データの参加者を 調査対象とし、コロナ禍における日常生活の変化を調査している。上述の二つのデータを 接続し、主に差の差法を使用し、分析を行った。
 本研究の発見は三つである。一つ目に、コロナ禍において、世代間で消費に異質性が あることが明らかになった。二つ目に、感染症が拡大すると、高齢者は若者より支出を一 割以上抑制することが明らかになった。三つ目に、高齢者は感染症拡大とともに買い物へ 行く回数も抑制していることが明らかになった。



Figure 1: コロナ禍における年齢別消費支出の推移

(作成)菊池淳一