合理的な経済行動を前提とすれば、カード破産に陥る人はいないはずです。でも実際には、多くの人がカード破産に陥っています。人間は合理的に行動することができないのでしょうか。プロ野球解説では、「大きなチャンスを逃すと流れが悪くなりピンチがやってくる」
とか 「エラーやファインプレーは流れを変える」という発言がよく聞かれます。チャンスやピンチ、エラーやファインプレーがランダムに生じているのであれば、特に意味がないはずです。それでも、相変わらず解説者がこのような発言を続けるのは、何か真実があるのでしょうか。人間は幸福を求めて生きていて、そのための手段として経済的行動を行っています。
ところが、 人々の幸福度を調べてみると、単に所得が多いから幸福であるという単純な関係は出てきません。 このように、人間の行動を経済合理性からだけ考えるとうまく説明できないことが多くあります。経済合理的な行動を取りながら、同時に非合理的な行動をとってしまう人間の特徴は、人間の脳の特徴に根ざしているのではないでしょうか。人間の脳がどのように様々な環境を認識し、行動を決定しているのかを研究する認知脳科学を用いると、そのような矛盾を説明することができるかもしれません。
このシンポジウムで、ニューロエコノミクスの世界を紹介したいと思います。 |