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ExpSS21 実験社会科学の概要

文化班

研究課題名: 社会行動の文化・制度的基盤

 本研究の目的は,人間が示す非合理性や利他性を"人間の社会性"として捉え,"経済人"にとってのアノマリーが,人間が作り出してきた社会環境の中で適応的な性質であることを示すことにある.この目的の達成に向けて,通常は"文化"の違いとして理解されている認知・信念システムの集団差が異なる"制度"(すなわち,自己維持的信念・誘因結合体)への適応行動としてより適切に理解できること,すなわち,人間の本質的社会性が異なる制度(人々の適応行動により形成・維持される誘因構造)への適応を促進するための「文化・心理的道具」として働いていることを明らかにするための,一連の実験研究を実施する.これらの一連の実験研究を通して,同時に,人間の社会性の適応基盤が,一方では集団内に存在する一般交換制度にあると同時に,もう一方では集団内での相対的優位性を確保する地位達成課題にあることを明らかにする.具体的には,以下の研究を行う.①認知・信念システムの「文化差」を,それぞれの文化における制度に対する適応行動を促進するための「文化・心理的道具」として捉え,実験室で制度の手がかりを操作する実験を通して,文化への制度的アプローチの有効性と限界を明らかにする.②囚人のジレンマ,社会的ジレンマ,最後通牒,信頼,独裁者,独裁者選択などの実験ゲームを集団の内外の成員を相手に実施し,集団内での協力行動を,集団内での一般交換制度への適応行動として理解すべきか,それとも集団間葛藤への適応行動として理解すべきかを明らかにし,集団行動を促進する心理メカニズムが如何なる適応的基盤を有するかを検討する.③他者が集団主義的信念を持ち集団主義的に行動するという信念,あるいは個人主義的信念を持ち個人主義的に行動するという信念を操作し,その結果人々が他者の行動の予測のもとで適応的な行動を取ることで,実際に集団主義的制度および個人主義的な制度を生み出すかどうかを検討する一連の実験を実施する.更に,文化特定的認知・信念システムが,特定の制度のもとで適応的な行動を促進することを明らかにするための,制度を操作した認知実験を実施する.④均衡状態での他者の行動を(先読み的に)信念として組み込まれたエージェントが,その信念のもとで最適行動を選択することで,特定の誘因構造がエージェントの行動により集合的に形成されるプロセスの分析を行う.
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