日本経済は1990年頃を境に、それまでの順調な成長局面から20年以上も続く長期不況に陥った。同様の事態は欧米諸国でも現れている。従来の経済学ではこの不況を短期の調整局面としてしか考えず、経済政策も短期不況を念頭にしており、思うような成果が出ていない。実際、以前には効果のあった金融緩和が、近年まったく効果を失っている (図1)。そのため、新たな長期不況の理論の確立が急務である。
本研究では、マクロ経済動学の枠組みに従来考慮されていなかった多面的な人間行動を導入し、長期不況を解く理論的枠組みを確立する。
また、本理論の前提となる人間行動の妥当性については、計量経済学とともに実験経済学の手法も取り入れて検証する。さらに、長期不況に陥った経済に必要な経済政策や制度改革のあり方を示す。