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特任助教(プロジェクト助教)
下平 勇太
しもだいら ゆうた

大阪大学卒、博士 (経済)(大阪大学)

[専門分野]
実験経済学、行動経済学

 
近年の研究テーマ
(1) 経済学に基づく選好測定と認知能力などの個人属性との関連の検討
(2) CES効用関数を用いた分配選好表現の検討
(3) 凸時間予算制約法による時間選好測定手法の検討

(1) 実験経済学の研究では,認知能力やリスク選好,社会的選好などの個人属性を測定し,それらの属性と実験ゲームにおける行動との関係を明らかにする研究が増えている.大学生サンプルを使って行われる実験研究には,一般的な集団への適用可能性の懸念があるが,カリフォルニア工科大学の学生サンプルとアメリカにおける一般人サンプルを比較した研究 (Snowberg & Yariv, 2021, AER) では,2つのサンプル間で属性変数間の相関関係の構造が類似していることが明らかにされた.本研究では,大阪大学学生と日本国内の一般人サンプルを対象に,オンラインアンケート形式による個人属性測定実験を実施し,2つのサンプルを比較した.両者の間には統計的に有意な差があるものの, Snowberg & Yariv (2021, AER) の結果と同様,個人属性変数の間の相関関係の構造は類似していることが分かった.
(2) Andreoni & Miller (2002, Ecta) および Fisman, et al. (2007, AER) は,拡張独裁者ゲーム実験における意思決定をCES効用関数に当てはめることによって分配選好を測定する実験手法を提案した.しかしながらCES効用関数には数学的な欠点があり,代替弾力性が無限大になると分配パラメータが消え,非対称な完全補完選好を表現することができなくなることが知られている.この問題に対して我々は新たな効用モデルを提案した.このモデルは従来のモデルと比べて,代替弾力性パラメータの全ての領域で分配パラメータの解釈が可能となり,非対称な完全補完選好も表現することができるようになった.このモデルによって,平等性と効率性の選好を互いに直交した成分として分析できるようになった.
(3) Andreoni & Sprenger (2012, AER)は時間選好を測定する実験手法として凸時間予算制約(CTB)法を提案した.この手法は,報酬の配分を決定する実験課題を繰り返し実施し,意思決定データを準双曲割引と呼ばれる効用関数に当てはめ,パラメータを推定することで時間選好を測定する.本研究では,個人ごとのパラメータ推定における推定の正確度を,パラメータリカバリシミュレーションを用いて検討した.シミュレーションの結果,現在バイアスパラメータの正確度が悪く,真のパラメータ値が0.9以上の個人(将来の利益を10%以上割引しない個人)に対しては,推定値が1と等しい(つまり価値を割り引かない)ことを棄却することが困難であることが明らかになった.

主要業績