ニュース

2025年4月21日
Lorenz Goette (National University of Singapore)が来所されました。(滞在期間: 2025年4月21日 ~ 2025年4月25日)
2025年4月7日
特任助教 (常勤) の公募掲載中。応募締切は5月7日です。詳細はこちらをご覧ください。
2025年4月6日
花木 伸行教授の論文"Financial Forecasting in the Lab and the Field: Qualified Professionals vs. Smart Students" (with Te Bao, Brice Corgnet, Katsuhiko Okada, Yohanes E. Riyanto, Jiahua Zhu) がJournal of Behavioral and Experimental Financeに受理されました。
2025年4月3日
北村 周平准教授の論文"Destructive Behaviour, Judgement, and Economic Decision-making under Thermal Stress" (with Ingvild Almås, Maximilian Auffhammer, Tessa Bold, Ian Bolliger, Aluma Dembo, Solomon M Hsiang, Edward Miguel, Robert Pickmans) がThe Economic Journalに受理・公開されました。
2025年3月25日
花木 伸行教授の論文"Freedom counts: Cross country empirical evidence" (with João V Ferreira, Fabrice Le Lec, Erik Schokkaert, Benoît Tarroux) がEuropean economic reviewに受理されました。

イベント

5/12
Maurizio Iacopetta
SKEMA Business School
社研セミナー
Common Ownership, Investment, and Economic Growth: A Theoretical and Quantitative Analysis
10:30 ~ 12:00 (A301)
5/12
Donald R. Davis
Columbia University
社研セミナー
Segregation, Spillovers, and the Locus of Racial Change (joint with Matthew Easton and Stephan Thies)
14:00 ~ 15:30 (A301)
5/16
Michalis Drouvelis
University of Birmingham
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
16:30 ~ 18:00 (Online)
5/19
Jean-Paul L'Huillier
Brandeis University
社研セミナー
The Slope of the Phillips Curve and the Mandate of the Central Bank (with Gregory Phelan and William R. Zame)
13:30 ~ 15:00 (A301)
5/26
Armon Rezai
Vienna University of Economics and Business
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
6/2
山岸 敦
一橋大学(准教授)
社研セミナー
Martyrs, Morale, and Militarism: The Political Impact of Devastation and Slaughter
13:30 ~ 15:00 (A301)
6/9
岸下 大樹
一橋大学
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
6/9
Helios Herrera
University of Warwick
社研セミナー
TBA
10:30 ~ 12:00 (A301)
6/13
Jeffrey Zeidel
New York University, Abu Dhabi
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
16:30 ~ 18:00 (Online)
6/23
Qianxue (Zoe) Zhang
東京大学
社研セミナー
TBA
10:30 ~ 12:00 (A301)
6/23
Yuting Chen
横浜国立大学
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
7/4
Lu Dong
南方科技大学
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
10:30 ~ 12:00 (Online)
7/14
中林 純
京都大学
社研セミナー
A Field Experiment on Antitrust Compliance (with Kei Kawai)
13:30 ~ 15:00 (A301)
7/25
Zheng (Michael) Song
Chinese University of Hong Kong
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
7/25
Wei Qiao
曁南大学
社研セミナー
TBA
15:15 ~ 16:45 (A301)
7/25
Alejandro Martínez-Marquina
University of Southern California
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
10:30 ~ 12:30 (Online)
9/5
Daniel Martin
University of California, Santa Barbara(Associate Professor)
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
10:30 ~ 12:30 (Online)

最近の研究成果の紹介

レーティングシステムは現代のオンライン取引において広く利用されている評価システムであり、消費者は匿名で評価を行い、他の消費者の意見を参考にすることができ る。しかし、こうしたシステムは、消費者の多様な意見を単純な(ときに一次元の)統計量に集約することから、その情報集約の精度は決して高いとは言えない。本研究では、この粗い情報集約システムが売り手の価格戦略に与える影響を分析し、さらにその結果として現れる取引の動学パターンや経済厚生への影響を考察した。
具体的には、消費者の選好が多様であることを明示的に考慮し、価格に敏感に反応する消費者と品質にこだわりを持つ消費者が混在する市場環境の分析を行った。このような状況では、売り手は価格を意図的に引き下げることで、価格に敏感な消費者から高いレーティングを引き出すことが可能となる。こうしたレーティング操作のインセンティブは周期的な価格サイクルを生み出すが、その一方で、売り手が外部オプションを持たない消費者に対して余剰を与えることにもつながる。つまり、レーティングを操作する戦略的インセンティブは自滅的であり、こうしたインセンティブが支配的な環境では、売り手の期待収益は制限され、市場における売り手の支配力は低下することとなる。また、取引プラットフォームは、消費者がレーティングを与える確率を高めるために様々な手段を講じることがあるが、こうした試みは売り手の戦略的インセンティブを強化することとなり、かえって売り手の期待収益を減少させる可能性があることも明らかにした。
レーティングシステムが価格戦略と社会学習の効率性に与える影響について
著者: 石田潤一郎Chia-Hui Chen、 Kong-Pin Chen
原題:
Social Learning and Strategic Pricing with Rating Systems
American Economic Journal: Microeconomics
,
Volume:forthcoming
伝統的な経済理論では、各個人は完全合理的に予測・行動するという仮定が広く使われてきた。この仮定は経済分析一般において非常に有用である一方で、現実の消費者の一部は完全合理的ではなく、ナイーブである(合理的期待からシステマティックに乖離した予想をもっている)ことが様々な実証・実験により確認されている。
本論文では、ナイーブな消費者と完全合理的な消費者が混在する場合を理論的に考察した。ナイーブさの中でも、「相手プレイヤーが持つ私的情報を、その相手の行動から完全合理的に推測できない」というバイアスに焦点を当てて分析した。その結果、アカロフの中古車市場のような片側の逆選択により市場の失敗が存在する場合において、ナイーブな消費者と一部の企業が取引することにより、合理的な消費者と残った企業とのさらなる取引が生じるという新たな効果が発生することを示した。この効果は伝統的なモデルでも(ナイーブではありうるが)同質的な消費者のみを分析した既存研究でも起こり得ず、ナイーブな消費者と合理的な消費者の両方が存在することで生じるものである。この効果をもとに最適な制度設計を理論的に特徴づけ、また経済厚生および消費者保護政策への含意を議論した。
消費者の一部がナイーブな場合における最適な市場メカニズムの設計
著者: 室岡健志山下 拓朗
原題:
Optimal Trade Mechanisms with Adverse Selection and Inferential Naivety
American Economic Journal: Microeconomics
,
関係的契約と労働市場の摩擦が賃金、雇用、生産性に与える影響についての理論的分析
市場において、立証可能な契約に基づいた取引ではなく、将来の関係を見越した上での暗黙の合意(関係的契約)のみに基づいて経済活動が行われることは多い。本論文では、このような関係的契約が労働市場で用いられた上で多数の企業が各期において生産活動を行う場合において、労働供給の増加が各労働者の賃金を上昇させうることを理論的に示した。この結果が生じるためには、労働市場における摩擦が特定の性質をもつことが重要であることを発見し、上記の結果が起こる条件を理論的に特徴づけた。さらに、各企業が利潤を最大化する場合においてもマイノリティ・グループの労働者が(異なるグループに属しているということ以外は全く同一の能力などをもつ)マジョリティ・グループの労働者よりも不利な条件で雇用される均衡がある特定の条件下では存在することを示した。また、その均衡のもとでは最低賃金制により労働条件差別の是正および雇用増加の両方が同時に起こりうることを理論的に示した。
関係的契約と労働市場の摩擦が賃金、雇用、生産性に与える影響についての理論的分析
著者: Matthias Fahn室岡健志
原題:
Informal Incentives and Labour Markets
The Economic Journal
,
Volume:135
No.665
144
2024年12月10日
繰り返し囚人のジレンマゲームにおける相手の行動に対する予想の正確性とばらつき
本論文では実験室でプレーされる繰り返し囚人のジレンマゲームにおいて、各被験者から相手プレーヤの選択についての予想を聞き出し、それをもとに自らの行動選択との関係や協力のメカニズムについて分析した。囚人のジレンマでは協力的なアクションCと非協力的なアクションDがあるが、実験では繰り返しゲームをプレーする被験者から毎期初に相手がその期にCを選ぶ確率の予想を聞き出した。この予想の動的な変化のパターンは、最終期のある有限期ゲームとない無限期ゲームで大きく異なり、実際の相手の行動をある程度正しく反映しているものの、ある種の定型的な「ずれ」も観察された。特に有限期ゲームでは最終期に近くなると相手のC選択の確率を高く見積もる傾向があり、本来協力が合理的でない有限期ゲームでも実験室においては協力が観察されるというこれまでの多くの実験結果を説明する結果となった。分析ではさらにそのような各期の選択に対する予想のデータから、「繰り返しゲームにおける相手の戦略の選択についての予想」を推定した。その結果、相手の戦略に対する各被験者の予想のばらつきは極めて大きく、各自の予想は同様に推定された各被験者の自らの戦略の選択を正当化する傾向がみられた。
繰り返し囚人のジレンマゲームにおける相手の行動に対する予想の正確性とばらつき
著者: 青柳 真樹Guillaume R. FréchetteSevgi Yuksel
原題:
Beliefs in Repeated Games: An Experiment
The American Economic Review
,
Volume:114
No.12
3944
2025年1月1日
コラボレーションと個人オプションとの意外な関係
共同研究や起業、輪読会など、複数の人々が集まって協働すること(以下、コラボ)は、一人で行うよりも大きな成果を上げうる。しかし、個々人がコストを負担して共有される成果を作るため、皆コストを負担するインセンティブを失うという「タダ乗り問題」を孕み、往々にして失敗する。
これまでの研究は、固定された集団内での公共財供給問題としてコラボをモデル化してきた。しかし、現実の多くのコラボでは、集団は固定されておらず、個人オプションも存在する中で人々が自主的に集まって形成される。例えば、輪読会に参加せず、一人で本を読み込むことも可能である。
そこで本研究では、コラボレーションを個人オプションとの選択問題としてモデル化し、そのことがコラボの成功率にどう影響するかを検討した。簡単なモデルと行動実験の結果、個人オプションがあることでコラボの成功率が高まることが分かった。具体的には、個人オプションがあると、他人の貢献に悲観的な人が集団に参加しないという自己選択が起こる。さらに、それを予期して初めから楽観的になる人が現れる。これらにより、集団内では楽観的な態度が広がり、「他人が貢献するなら自分も貢献しよう」と考える人が増える。
さらに、個人オプションの存在がタダ乗り問題の解決を妨げるとしていた近年の既存研究と本研究の結果を統合する上で、グループの範囲の柔軟さが重要であることを示した。集団が初めから固定されている場合には(図左)、個人オプションを選ぶ人の存在は集団に貢献する人数の減少に直結し、集合解の成功率を下げる。一方で、個人オプションを選ぶ人がいてもその後に集団を形成する場合には(図右)、互いへの楽観という正の影響の方が強くなる。これら、コラボの成立条件に関する統一的な理解は、企業など現実の場面でより多くのコラボを可能にする施策に応用できるだろう。
コラボレーションと個人オプションとの意外な関係
著者: 森 隆太郎花木 伸行亀田 達也
原題:
An outside individual option increases optimism and facilitates collaboration when groups form flexibly
Nature Communications
,
Volume:15
No.1
2023年11月29日

Research Highlights

Ingvild Almås,
Maximilian Auffhammer,
Tessa Bold,
Ian Bolliger,
Aluma Dembo,
Solomon M Hsiang,
Shuhei Kitamura,
Edward Miguel,
Robert Pickmans
The Economic Journal,
2025年1月20日
DOI: 10.1093/ej/ueae116
Optimal Trade Mechanisms with Adverse Selection and Inferential Naivety
Takeshi Murooka,
Takuro Yamashita
American Economic Journal: Microeconomics,
forthcoming
Matthias Fahn,
Takeshi Murooka
The Economic Journal,
Volume:135
Number:665
p.144-179
2024年12月10日
DOI: 10.1093/ej/ueae063
Felix Holzmeister,
Taisuke Imai,
et al.
Nature Human Behaviour,
Volume:9
Number:2
p.316-330
2025年3月1日
DOI: 10.1038/s41562-024-02062-9
Masaki Aoyagi,
Guillaume R. Fréchette,
Sevgi Yuksel
The American Economic Review,
Volume:114
Number:12
p.3944-3975
2025年1月1日
DOI: 10.1257/aer.20220639
wani-hakase
The university of osaka
社会経済研究所
The University of Osaka
〒567-0047 大阪府茨木市美穂ケ丘6ー1
©2025 Institute of Social and Economic Research, The University of Osaka・Photo by Shinya Yamada