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日本語での研究紹介


日本における相対所得と結婚の関係


2022-4 三上亮
Ryo Mikami (2022), “Relation between Relative income and Marriage in Japan.” ISER Discussion Paper No.1172.

日本における出生率低下の要因 として晩婚化問題が挙げられる。近年、先進国を中心に出生率の低下が観測されているが、医療技術の進歩に伴い日本では母親の初婚年齢毎の平均出生数は若干の増加傾向にある。また、非嫡出子(婚外子)の割合が諸外国と比較して極端に低く、結婚タイミングの遅れが出生率に大きく影響を与えると考えられている。

出生動向基本調査の調査結果を見ると、日本人未婚男性にとって、資金に関する問題が結婚を躊躇する最大の要因として挙げられている。この傾向はどの社会階層でも同様に強く、比較的所得水準の高いグループでも確認されている。一方で、日本人男性が結婚の際に、どの程度の所得水準が必要だと考えているかは未知である。 本研究では日本のデータを用い、準拠集団(学歴、年齢、居住地域などから定義されるグループ)ごとの所得分布を推定し、就業者男性の所得水準と婚姻関係について調査した。

分析の結果、就業者男性の婚姻確立が準拠集団内の所得分布の中央値付近で大きく変化する傾向が見られた。自身と近しい属性を持つ人々の中で、相対的に低所得な男性にとって、所得の上昇は婚姻確率を大きく増加させるが、この傾向は一定の水準を上回ると非常に小さくなることが明らかになった。上記の結果から、日本の就業者男性は結婚行動の際に、自身の所得そのものだけでなく、自身の周りの人間の所得水準を重要視している可能性が示唆される。

(作成) 三上亮