日本語での研究紹介


二面プラットフォーム上での戦略的参加者の最適マッチングについて


Matching Strategic Agents on a Two-Sided Platform
Games and Economic Behavior, Masaki Aoyagi, Seung Han Yoo

参加者をお互いにマッチするようなプラットフォームはオンライン経済の発展とともに現代経済で重要な役割を果たすようになっている。例えば財の取引に用いられるプラットフォームは売り手と買い手を引き合わせ、ジョブプラットフォームは雇用者と労働者をマッチさせる。いずれの場合もプラットフォームは直接出会うことのできないような経済主体同士の取引を介在し、社会厚生の向上に寄与する。一方いくつかのオンラインプラットフォームは巨大化し、その独占的な地位を利用してそれらプラットフォームの参加者を搾取しその結果社会厚生をゆがめているのではないかという懸念も持たれている。本論文では参加者の戦略的な行動を考えることにより、独占的なプラットフォームがどのように社会厚生をゆがめる可能性があるかについて理論的な分析を行った。

先行研究ではひとたびプラットフォーム参加者がお互いにマッチされると、それぞれの参加者の効用は彼らのタイプによって自動的に決定されるという仮定を置いている。一方多くの状況でプラットフォーム参加者は相手とマッチされた後に戦略的な行動を取ることが考えられる。例えばオークションプラットフォームの参加者は他の入札参加者がどのようような入札行動をとるかを十分に考慮し、自らの入札価格を戦略的に決定するだろう。本論文ではこのように参加者がマッチされた相手に対してお互いに戦略的な行動をとる状況を考え、それを予期するプラットフォームが異なるタイプの参加者をどのようにマッチさせることによって自らの利潤を最大化しようと試みるかについて分析を行う。具体的には市場は2つのサイドからなり、一方には財の売り手、他方には財の買い手が存在する。売り手、買い手それぞれには効率的なタイプ、非効率的なタイプの2種類が存在して、できるだけ効率的なタイプ同士をマッチさせる同類マッチング(assortative matching)が社会厚生を最大化する。このような状況において、プラットフォームは意図的に効率的な売り手を非効率的な売り手とある確率でマッチさせることで自らの利潤を高めようとする動機があることを本論文は示した。このように非効率なマッチングを用いることによってプラットフォームが社会厚生をゆがめる可能性があることは本論文が初めて指摘した内容であり、その主要な貢献となっている。

(作成) 青柳真樹