本研究は, 処方箋を要する医薬品の消費者向け広告 (DTCA) のコンテンツ規制について分析した論文である. 米国では, DTCA中に製品固有の情報 (製品名, 有効性, 安全性等) を含めることが許容されている (Product-specific DTCA). この種のDTCAは消費者に偏った知識を与え適正な診療を阻害するため, 臨床医からは規制を求める声も多く, 疾病の存在や一般的な治療法の紹介に限定するDTCA (Category-specific DTCA) への規制導入が求められている.
Product-specificとCategory-specificとの違いは, DTCAがライバル社製品の需要に与える影響にある. Category-specific DTCAは製品固有の情報を含んでいないため, 消費者は医師の処方決定をそのまま受け入れることから, 自社のDTCAは他社製品の需要も増やす効果を持つ. それに対しProduct-specific DTCAに触れた消費者は特定製品に固執し, また医師がそのような消費者を説得のためには時間を要するので, 消費者の要求する製品をそのまま処方する. 従って自社のDTCAはライバル社製品の需要を奪う効果を持つ.
主要な結果は以下の通りである.
本研究の貢献は, 先行研究では注目されていなかったDTCAのコンテンツ規制がもたらす影響を明示的に分析した点にある. また, DTCAを規制することが医薬品産業にとって望ましく, 消費者にとっては不利益となるケースがあることを示したことも特筆すべき点である.
DTCAのコンテンツ規制の効果 (1行目: 需要量の差, 2行目: 利潤の差, 3行目: 消費者余剰の差)
(作成)髙原豪・石田潤一郎