日本語での研究紹介


コロナ禍の日本における子どものオンライン学校教育へのアクセスと需要


原題: Access to and demand for online school education during the COVID-19 pandemic in Japan
著者: Hideo Akabayashi, Shimpei Taguchi, Mirka Zvedelikova
Accepted in Journal of International Journal of Educational Development 96 (2023)

新型コロナウイルス感染症の流行は、日本を含めた世界中で、学校を閉鎖に追い込んだ。子どもたちの教育を継続するためにオンライン教育が導入されたが、すべての子どもたちがオンライン学習にアクセスできたわけではなかった。オンライン学習へのアクセスの不平等に関する既存研究は多いが、オンラインでの学校教育と学校外教育へのアクセスを同時に分析した研究は多くない。そして、子どもの親による、学校教育のオンライン化の要望を分析した研究はさらに少ない。

本研究では、2020年5月と12月に収集されたデータを用い、子どもの学校内外でのオンライン学習の経験について分析した。私立学校に通う子ども、所得の高い家庭の子どもほど、学校が提供するオンライン学習をより多く経験している。また、所得の高い家庭の子ども、高学歴の親をもつ子どもほど、学校外でのオンライン学習を経験している。2020年5月から12月にかけて新型コロナウイルス陽性者数が相対的に増加した地域では、私立学校の子どもと、親の学歴が高い子どもにおいて、相対的に、学校外でオンライン学習を経験する割合が増加したが、そのような傾向は、学校が提供するオンライン学習に関しては見られなかった。



また、所得の高い親、学歴が高い親ほど、学校教育のオンライン化を要望する傾向が確認されたが、母親が正規労働者であったり父親が非正規労働者であったりした場合には、短期的には、学校教育のオンライン化を要望しない傾向を確認した。



(作成)Mirka Zvedelikova(校閲)下平勇太