日本語での研究紹介


統計学と常識


原題: Statistics and Common Sense
著者: 花木伸行, Jan R. Magnus, Donghoon Yoo
ISER Discussion Paper No. 1150, November 2021
Accepted in Journal of Journal of Statistics and Data Science Education

 確率論や統計学は現在重要視されているにもかかわらず、人々に十分に波及していると は言えない。ビックデータの普及やデータ分析の発展によって、確率論や統計学の重要性は 増してきている一方、確率論や統計学は一般的に難しい分野であると認識されている。その 原因は三つ考えられる。一つ目に、歴史が浅いことが挙げられる。数学は紀元前から歴史が あるが、確率論はまだ若い学問であり、十六世紀頃から発展している。統計学はさらに若い 学問であり、十九世紀頃から発展している。二つ目に、思考方法の異質さが挙げられる。人々 が生活をするうえで、リスクや確率に関する知識が必ずしも必要ではなかったため、学習し てこなかったという可能性が考えうる。三つ目に、教育が不足していることが挙げられる。 数学は基本科目であるが、確率や統計学はそうではない。
 本研究は、確率論や統計学は人々にどこまで浸透しているのかを検証するために、大阪大 学の学生を対象にオンライン調査を実施し、統計学と一般的に備わっている知識が乖離し ているのかを分析した。分析の結果、簡単な確率的な問題は統計学に関する訓練を受けてい ない人でも回答することができることが明らかになった一方、難しい確率的な問題は回答 者の経歴や能力にかかわらず回答が困難であることも明らかになった。これらの結果は、確 率論や統計学への理解がいまだ不足していることを示している。

(作成)菊池淳一、花木伸行