日本語での研究紹介


資産選好と合理的バブル


原題: Wealth Preference and Rational Bubbles
著者: Jean-Baptiste Michau、 小野善康、Matthias Schlegl
Accepted for publication in European Economic Review

 資産バブルとは、株価など資産価格が、ファンダメンタルズを越えた高水準を維持することであり、多くの経済で観察される現象である。ここで、株価の場合のファンダメンタルズとは、企業の将来にわたる収益流列の総計を現在価値に直したものである。標準的な経済理論では、株価はファンダメンタルズを反映するものとなるため、バブルの発生は世代重複モデルや金融市場での歪みを導入して説明されてきた。例えば世代重複モデルであれば、資産価格にバブルが発生していても、永遠に次の世代にそれを売ることができるため、ねずみ講的状況が維持されるからである。
 本論文は、家計が富を保有することで効用を得る(資産選好)ならば、世代重複や金融市場の歪みなどのない、無限に生きる(あるいは子孫のことを自分と同じように考える)代表的家計からなる標準的新古典派的経済においても、合理的なバブルが存在しうることを示すものである。このようなバブル均衡の性質は、Tirole (1985)が世代重複経済で得たものと非常に似ているが、根本的なメカニズムは異なっている。世代重複モデルのバブルは、異なる世代の家計間の交換が永久に行われるために存続しうる。これに対して本モデルでのバブルは、資産選好を反映した価値を表しており、背景のないものではなく人々の選好を反映しているため、資産選好が存在する限り崩壊しないのである。
 本モデルを使って、公的債務の存続可能性についても分析されている。




(作成)小野善康