日本語での研究紹介


資産選好と格差:ピケティの議論に対する理論構築


原題: THE PREFERENCE FOR WEALTH AND INEQUALITY: TOWARDS A PIKETTY THEORY OF WEALTH INEQUALITY
著者: Jean-Baptiste Michau,小野 善康 and Matthias Schlegl
ISER Discussion Paper No.1223

本論文は、資産選好が資本の蓄積と資産格差に与える影響を分析している。人々は資産が増えてももっと貯めたいという気持ちは減らないが、消費が余り増えればだんだんいらなくなる。そのとき、利子率が経済成長率より高い経済であれば、資産格差は増大して最後は極端な格差社会になる。しかし、資本は相変わらず蓄積されるため、生産力は拡大していく。このような状況に対する格差是正策として累進的な富裕税を課すと、富裕層の貯蓄を阻害するため資本蓄積が下がる。その結果、利子が上昇し労働生産性が下がるため、中間層は利子上昇の恩恵を受けるが、貧困層は賃金下落の悪影響で消費を減らしてしまう。つまり、最終的には富裕層と貧困層には不利に、中間層には有利に働く。




(作成)小野 善康