日本語での研究紹介


景気と環境規制(二国経済モデル)


原題: Environmental policies and stagnation in a two-country economy
著者: 小野 善康
ISER Discussion Paper No.1222

 地球温暖化の原因となる炭素排出の削減努力負担割合をめぐり、各国は、削減量増加に伴う費用を自国経済へのさらなる負担増と考えており、このことが炭素排出削減の国際協調の妨げになっている。しかし、資産選好を用いた二国経済モデルを用いると、両国の経済状況、つまり完全雇用か不況かの組み合わせによって、一国の排出制限厳格化が両国の実質消費と汚染排出に与える影響が大きく異なることがわかる。
 両国が完全雇用の場合での一国の排出規制強化は、通常言われているように、両国の経済的負担となって実質消費を減少させる。しかし、一方が不況、他方が完全雇用である場合には、両国の実質消費は逆に増加する。不況国による排出規制の強化は自国の通貨安を呼び、輸出が増加して雇用が増え、不況国の景気が良くなる。他方、完全雇用国にとっては輸入製品の価格低下(交易条件の改善)となって、輸入を増やすことができるからである。
 本研究では、さらに、先進国による発展途上国への環境技術支援が、両国の実質消費や炭素排出量に及ぼす効果についても理論的に分析し、両国の経済状況(完全雇用か不況)によって効果が大きく異なることを示した。