日本語での研究紹介


曖昧性下におけるランダム支払法の性能評価


原題: Experimental Evaluation of Random Incentive System under Ambiguity
著者: 青山知仁、花木伸行
ISER Discussion Paper No.1236

本論文では,曖昧性下におけるランダム支払法の性能を実験的に評価した.ランダム支払法は経済実験で用いられる標準的な報酬支払法である.しかし,参加者が曖昧性に直面する実験においては,ランダム支払法を用いても真の選好は抽出できない可能性があると考えられている.本論文の実験ではEllsbergのパラドクスにおける参加者の選択が報酬支払法に応じて変化するか検証することでランダム支払法の性能を評価した.

本研究の主な結果は以下の二つである.第一に,オンライン実験とラボ実験のいずれでも,ランダム支払法が抽出される選好を歪めるという証拠は見つからなかった.この結果は既存研究の結果と反する.既存研究と本研究では異なる方法で選択状況を参加者に提示しており,それが結果に影響した可能性がある.第二に,ランダム支払法を用いたトリートメントにおいて曖昧性回避的な行動をとる参加者の割合は,オンライン実験と比較してラボ実験で小さかった.本研究のラボ実験はPrinceと呼ばれる実験ガイドラインに従って実施した.Princeに基づくランダム支払法の使用は,識別される曖昧性態度に大きな影響を与える可能性がある.




図: Ellsbergの壺