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ExpSS21 実験社会科学の概要

政治班

研究課題名: 政治制度の選択と機能分析

  政治班の目的は,領域全体の主題である実験社会科学研究の確立に向け,政治学分野の実験研究を発展させることである.明らかにしようとする政治学的問題は,「民主主義政治はいかにして機能することが可能か」である.この大きな問題を,より特定化された以下の5つのパートに分けて各担当者を決め,実験により分析を進める.
 ①「民主制と独裁制」では,「民主主義を選択するとうまく行くのか」という根本の問いを考える.公共財の供給に際して生じるフリーライディングの問題を題材とし,問題の解決策を被験者全員による投票によって選択する場合(民主制)と選択が一人に任される場合(独裁制)を比較する.どちらのほうがフリーライディングを減らすことができるかを観察する.
 次に,「民主主義を選択するならどのように営むべきか」を考える.民主主義を実現する制度として,代議制と討議制を取り上げる.代議制のもとでは,代議士を人民から公選しなければならない.そこで,有権者の投票行動に着目する.投票行動は,投票へ行くか否か(投票参加)とどの政党・候補者に投票するか(投票方向)に分けられ,投票環境(集団の凝集性,政治情報,有権者の資源やインセンティブ)と選挙制度によって影響される.投票環境と投票参加の関係を探るのが②「投票参加」である.投票環境が投票率のダイナミズムに与える効果を分析する.投票環境と投票方向の関係は,③「投票方向」により分析される.候補者やメディアによって発信される政治的情報に焦点を当て,種々の政治的情報が有権者の候補者選択に対してどのような効果を持っているかを測定する.選挙制度と投票参加・投票方向の関係は,④「選挙制度」により分析される.民意がよりよく反映されるにはどのような選挙制度が望ましいかを検討する.
 最後に,討議制を扱うのが⑤「討議制」である.討議制は,無作為抽出された一般市民が討議・熟慮を通じて政治的問題に取り組むことにより,代議制を補完しようとする制度である.欧米を中心に実践され,日本でも市民討議会などの形で試みられているが,参加者の属性(教育水準等)により討議への影響力に差が出たり,意見対立が深刻化したりする(集団極化)などの問題が指摘されている.そこで,こうした問題がどのような条件のもとで生じるか,問題の発生を防ぐためにどのようなルールを設ければよいかを分析する.
 以上のように,民主主義をめぐる一連の実験研究を通じて各政治制度の機能を検証し,政治制度の選択問題(民主制と独裁制,代議制と討議制,各種の選挙制度,各種の討議ルール)に対して答えを見出すことを試みる.
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