ミシガン州立大学卒、Ph.D.,(ウィスコンシン大学(米国))
[専門分野]
契約理論,組織の経済学,情報の経済学
成熟した社会においてイノベーションの創出は経済成長の唯一の原動力ですが,どのような環境で知識創出活動が活性化するのかという点に関しては未だに十分な理解が得られているとはいえません.私が現在進めている研究では,バンディット問題とよばれる統計的意思決定モデルの理論枠組みを企業のような組織環境に応用し,試行錯誤によって正しい選択肢を探らなければならない状況で,どのような非効率性が生じ,それをどのようにして解消すればよいのかという問題を分析しています.こうしたモデルは,組織がイノベーションを創出するうえで直面する探索(exploration)と活用(exploitation)のトレードオフをうまくとらえることができるため,権限の配分や昇進ルールといった組織構造が,組織のイノベーション創出活動の水準に与える影響について有益な知見を得られると考えています.現在は,(1)組織を率いるリーダーの属性が組織構成員のモチベーションに与える影響と(2)自分の能力を周囲にアピールしようという評判形成のインセンティブが知識探索行動のパターンに与える影響,という二つの問題について特に分析をしています.