日本語での研究紹介


企業家を引き合わせるスキルシェアリングプラットフォーム


原題: Many-to-Many Matching on a Skill-Sharing Platform
著者: 青柳真樹
ISER Discussion Paper No. 1186, August 2022

企業家が起業し、それを成功させるために通常複数のスキルを必要とする。例えばフードデリバリーを起業しようとするものは調理スキルに加えて、会計に関するスキルを必要とし、広告ビジネスを起業しようとするものはITスキルに加えて、グラフィックデザインのスキルを必要とするだろう。本論文では各経済主体が起業プロジェクトを持つ企業家であると仮定し、彼らが自らのプロジェクトを成功させるために自分の持つスキルに加えて、もう一つの「補完スキル」を必要とするような状況を考える。ただし各人のもつスキルは確率的に決まるため、他の企業家の誰が必要とする補完スキルを持っているかはわからない。企業家同士をマッチングするプラットフォームが存在した場合に、自らの必要とする補完スキルをもつ企業家と引き合わされた企業家はマッチングに価値を見出すため、プラットフォームはマッチングに適切な価格付けすることによって利益を見込むことができる。そこで本論文ではプラットフォームをメカニズムデザイナーとしてとらえ、各企業家から彼らの持つスキルを聞き出し、それをもとにマッチングと価格付けを行うメカニズムを考える。各企業家が自分の持つスキルを正しく申告し、さらにプラットフォームから提示された価格でマッチングを受け入れることを最適と考えるようなメカニズムを特徴づけることが本論文の目的である。具体的には各スキルとその補完スキルの間の関係を「補完スキルネットワーク」として定義し、各人のスキルが確率的に決定される場合にその補完スキルネットワークが確率的な「補完人的ネットワーク」に変換されることを指摘したうえで、プラットフォームが期待しうる利得が補完スキルネットワークにどのように依存しているか、また企業家の数が大きくなった場合にどうなるかについて分析を行った。



補完スキルネットワークの例

(作成)青柳真樹