大阪大学 社会経済研究所
Institute of Social and Economic Research
日本語での研究紹介
動的美人投票ゲーム実験
原題: An Experiment on a Dynamic Beauty Contest Game
著者: 花木伸行、高橋 悠太
ISER Discussion Paper No. 1213, September 2023
本論文では、標準的な新ケインズ派マクロ経済学モデルに基づいた、動的美人投票ゲームの実験枠組みを提案し、実験を行った。これまでの美人投票ゲーム実験では、毎回、将来のある一時点の価格予測を抽出していたのに対し、本論文の実験では、将来の複数時点の価格の予測を抽出している。これによって、将来の経済状況の変化に対する情報が、予測にどのような影響を与えるのかを分析することが可能となった。
実験結果は以下の通りである。(1)戦略的補完性がある場合の方が、戦略的代替性がある場合よりも実験参加者の予測と合理的期待モデル均衡との乖離が大きくなる。(2)参加者の予測は将来の経済状況の変化に対する情報に反応する。(3)参加者の予測方法は、合理的期待モデルとは異なるが、どのような予測をたてているかは、経済状況（戦略的補完性の度合い）に応じて異なっている。 これらの実験結果から、期待形成は、経済状況に応じて内生的に決定している可能性が考えられる。今後、これらの実験結果を包括的に説明できる期待形成モデルの構築が期待される。
図：戦略的補完性がある場合と戦略的代替性がある場合での価格（黒）と予測（カラー）の動き。
点線は合理的期待モデルの定常状態（ラウンド13と14の間で、65から、85に変化する）
（作成）花木伸行、高橋 悠太