本論文では,曖昧性下におけるランダム支払法の性能を実験的に評価した.ランダム支払法とは、実験参加者が複数のタスクで意思決定を行い、そのうちランダムに選ばれた一つのタスクに基づいて謝金の支払いが行われるという経済実験で用いられる標準的な報酬支払法である.しかし,参加者が曖昧性に直面する実験においては,ランダム支払法を用いても真の選好は抽出できない可能性があることが理論的に指摘され、また、Baillon et al (2022, Econometrica)の実験結果は、そのことを実証した。本論文の実験では独自にデザインした選択問題(図1)における参加者の選択が報酬支払法に応じて変化するか検証すること、そして、Baillon et al. (2022)の再現実験を実施することで、ランダム支払法の性能を評価した.
本研究の主な結果は以下の二つである.第一に,独自にデザインしたオンライン実験とラボ実験のいずれでも,ランダム支払法が抽出される選好を歪めるという証拠は見つからなかった.また、Baillon et al. (2022)の結果は再現されなかった。以上のことから、ランダム支払法が抽出される選好を必ずしも歪めるわけではないことが示された。
曖昧性下におけるランダム支払法の性能評価
著者: 青山知仁花木伸行
原題:
Experimental Evaluation of Random Incentive System under Ambiguity