ニュース

2026年4月2日
Filippos Exadaktylos 先生 (Universitat de Barcelona, Assistant Professor) が来所されました。(滞在期間: 2026年4月2日 ~ 2026年4月28日)
2026年4月2日
Hikmet Gunay 先生 (University of Manitoba, Professor) が来所されました。(滞在期間: 2026年4月2日 ~ 2026年5月7日)
2026年4月1日
中村 さゆり助教が着任されました。
2026年4月1日
Jin Ye准教授が着任されました。
2026年3月31日
花木教授・ クロシャール 講師の論文"The private solution trap in collective action problems across 34 nations"のプレスリリースを公開しました。

イベント

4/1
高橋 裕希
Tilburg University(博士研究員)
社研セミナー
Does the Gender Ratio at Colleges Affect High School Students' College Choices?
15:00 ~ 16:00 (Online)
4/6
Konstantin M. Wacker
University of Groningen
社研セミナー
How important is human capital misallocation across sectors for aggregate productivity differences? Evidence beyond Cobb-Douglas
10:30 ~ 12:00 (A301)
4/6
Christos Ioannou
Université Paris-I-Panthéon-Sorbonne(教授)
社研セミナー
Non-Parametric Strategy Inference in Repeated Games
13:30 ~ 15:00 (A301)
4/13
高橋 秀典
京都大学
社研セミナー
Bidding Too Low to Win and Too High to Lose? The Roles of Secret Floor Prices in Renegotiation of Incomplete Contracts
13:30 ~ 15:00 (A301)
4/17
Fuhai Hong
Lingnan University
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
10:30 ~ 12:00 (Online)
4/20
Hikmet Gunay
University of Manitoba(教授)
社研セミナー
Bidding into Bankruptcy: How Auction Order Affects Overbidding and Losses
13:30 ~ 15:00 (A301)
4/27
Hillel Rapoport
Université Paris-I-Panthéon-Sorbonne
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
5/11
Joshua Hausmann
University of Michigan
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
5/15
Wei Huang
Chinese University of Hong Kong
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
10:30 ~ 12:00 (Online)
5/18
市橋 翔太
Queen's University
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
5/25
芹澤 成弘
大阪経済大学
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
5/29
ChienHsun Lin
National Taipei University
東アジア実験・行動経済学オンラインセミナー
TBA
10:30 ~ 12:00 (Online)
6/1
Tim Ruberg
東京大学
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
6/15
Chen Lyu
北京大学
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)
6/16
Ayumu Ken Kikkawa
University of British Columbia(助教授)
社研セミナー
TBA
15:00 ~ 16:30 (A301)
6/29
Suanna Oh
École d'économie de Paris(助教授)
社研セミナー
TBA
13:30 ~ 15:00 (A301)

最近の研究成果の紹介

大阪大学社会経済研究所(阪大社研)の花木伸行教授と Gwen-Jiro Clochard(クロシャール ゲンジ ロウ)講師が参画した世界 34 か国横断の大規模実験により、気候変動のような国際社会全体で協力が必 要な問題において、私的解決※1策が存在する社会では、不平等が拡大しやすく公共的解決※2が不安定化 するという構造的リスクが世界共通で存在することを明らかにしました。
これまでの実験研究では、小規模研究に限られており、文化的価値観や社会経済的条件の違いを横断 的に検証した研究は存在しませんでした。また、富が努力によるものか運によるものかが意思決定に与え る影響も十分に検証されていませんでした。
7,500人超が参加した実験では、「富裕層」または「貧困層」に分けられ、「全員に利益をもたらす公共的 解決策」または「自分のみを守る私的解決策」に資源を配分する意思決定を繰り返し行いました。その結果、 「富裕層」の参加者が一貫して私的解決策を選択する割合が高く、公共的解決への相対的貢献は低いこと が確認されました。この傾向は 34 か国すべてで観察され、集団全体の利益を損なうとともに、実験終了 時の不平等を大幅に拡大させました。また、富の起源(努力か運か)は意思決定に有意な影響を与えない ともわかりました。
本研究では、人々のもつ傾向が文化を超えて観察され、相互協力を促す制度が公共的解決を支える普 遍的メカニズムであることが明らかになりました。これらの知見は、国際的な気候政策枠組みや協調メカ ニズム設計に対して、「罠」を回避するための実証的根拠に基づく重要な指針と、国際交渉や政策形成に重 要な示唆を提供することが期待できます。
本研究成果は、2026 年 3 月 21 日(土)2 時に Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)に掲載されました。
私的解決策の罠
著者: Eugene Malthouse,クロシャール ゲンジ ロウ,花木伸行,et al.
原題:
The private solution trap in collective action problems across 34 nations
Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS),123(12)2026
「企業の見落とし」が実質為替レートを長引かせる
注:各商品の価格差(実質為替レート)がどの程度の理論値から乖離しているのかを示した図。集計値も 財・サービス別でも乖離が持続的に継続されることが分かる。
為替レートが動くと、同じ商品でも国によって相対的な価格差が生じる。通常の経済学では 、企業が設定する価格を正しく見直すなら、こうした差はそれほど長く続かないはずだと考えら れてきた。ところが実際には、国全体で見た実質為替レートのずれは、数年単位でしつこく残る 。これが国際マクロ経済学でよく知られた「PPPパズル」である。
本研究は、その背景に、企業が「マクロ経済情報に十分な注意を向けられない」認知能力の 限界があるのではないかと考えた。企業は価格を決めるとき、自社のコストだけでなく、マクロ 経済全体の動向も見なければならない。しかし現実には、そうした情報を常に十分に追うことは 難しく、企業は経済全体の変化を価格に部分的にしか織り込められない。この仕組みを理論モデ ルに組み込むと、個々の商品の価格差が国全体の実質為替レートの動きに引きずられ、その結果 、価格差が自己強化的に長引くことが分かった。
さらに、米国・カナダおよび英国・ユーロ圏の小売価格データを用いて検証すると、企業が 完全にはマクロ経済情報に注意を向けていないという仮説を支持する結果が得られた。推計され た注意の度合いを使ってモデルを計算すると、国全体の実質為替レートが長く持続することだけ でなく、個別商品の価格差のほうが国全体の価格差より早く縮小することを同時に説明できる。 これは、物価や為替の動きを理解するうえで、企業の認知能力の限界が重要な役割を果たしてい ることを示唆している。
「企業の見落とし」が実質為替レートを長引かせる
著者: Mario J. Crucini,新谷 元嗣,敦賀 貴之
原題:
A Behavioral Explanation for the Puzzling Persistence of the Aggregate Real Exchange Rate
Journal of the European Economic Association
事業撤退のタイミングと評判のダイナミクス
事業においては、開始すること以上に、状況がうまくいっていないときに適切なタイミン グで撤退することが重要である。この点について、Godinはベストセラーとなった著書 『The Dip』において “winners quit fast and often” と述べ、迅速に撤退することの重要性を 強調している。しかしその一方で、不確実性を伴う事業においては、perseverance(粘り 強さ)やresilience(回復力)の重要性を評価する言説も多く見られる。
本論文では、このような一見矛盾する言説の背後にある構造を明らかにするため、不確実 なプロジェクトに取り組む個人が「いつ撤退するか」という行動を通じて、自らの能力や 先見性(ビジョン)を他者に示す状況を分析する。モデルでは、高能力タイプはプロジェ クトの質に関する情報を動学的に観察でき、悪い知らせを受け取った時点で撤退する。一 方、低能力タイプは情報を得られないため、高能力者を装う目的で一定期間にわたり撤退 行動を模倣する可能性がある。その結果、撤退のタイミングと評判の関係は単調ではなく 、早すぎる撤退と遅すぎる撤退の双方が、状況によっては評判を高める可能性があること が示される。本研究は、粘り強さと見切りの判断がどのように評価されるかを理論的に統 一的に説明し、起業や研究開発など探索的活動における意思決定や政策設計に重要な含意 を与える。
事業撤退のタイミングと評判のダイナミクス
著者: 石田 潤一郎,Wing Suen
原題:
Signaling Vision: Knowing When to Quit
International Economic Review
社会的文脈における移民と差別の要因:ラテンアメリカ15か国からの実験的
証拠
本論文では、海外からの移民がアマチュアサッカークラブに参加しようとした際に、差別 に直面するかどうか、統計的差別の種類を個人的なもの(個人のプレイスキルに懐疑的)と 構成的なもの(移民がチームにうまくなじめるか懐疑的)の二つに分け、分析を行った。15 ヶ国のサッカークラブチームに向け、10,000通を超える内容が異なる架空の加入申請書を ランダムに送付するというフィールド実験を行った。申請者の出身国、およびサッカーに 精通しているもしくは語学が堪能であるか、の情報をランダムに記載している。この実験 設定により、移民の背景や能力シグナルがクラブチームからの回答をどのように形成した かを検証することが可能になる。
結果として、移民に対する差別の証拠は全体としては見つからなかった。しかし、アジア 圏に出自を持つ申請者に対しては好意的な回答が比較的少ない傾向にあった一方で、ヨー ロッパ圏の申請者にはわずかに地元(南アメリカ)の申請者よりも好感を持たれていたと いう、統計的に有意な差異が見られた。また本研究の結果は、各国のFIFAランキングとク ラブチームからの回答率には負の相関があることを明らかにしており、リクルーターたち はサッカーのプレイスキルの代わりに属する集団の情報を用いて判断しているという個人 に対する統計的差別の形成が示唆された。しかし、所属集団が用いている言語を代理変数 とした集団に対する統計的差別に関する証拠を見つからなかった。他方で、言語の流暢さ や個人のプレイスキルに関する情報は統計的差別に影響を与えなかった。
本研究は、嗜好に基づく差別および統計的差別の分析に広く貢献するものであり、経済的 インセンティブが最小限であるアマチュアスポーツのような社会的状況でさえ、民族ごと の差別的扱いが残りうることを示した。重要な点として、これまでのランダムに履歴書を 送付する実験研究では、嗜好に基づく差別と構成的な統計的差別を混同している可能性が あることに注意されたい。なぜなら、集団に所属していること自体がチームになじめるか の代理変数となりうるからである。本論文は特に、非市場的な環境における移民排除を促 す仕組みに関する将来の研究の必要性を強調すると共に、強力な経済的インセンティブが 存在する設定によりもたらされた結果を過度に一般化することに警鐘を鳴らしている。
Figure 2に関する説明:サンプル数N=10,525。パネル(a)は、海外からもしくは地元からの 申請者に対する回答率の違いが、統計的に有意ではないことを示している。パネル(b)は、 アジアからの申請者には地元の申請者よりも好意的な回答が有意に少ない一方で、ヨーロ ッパの申請者には好意的な回答がわずかに多いことを示している。
※統計的差別: ある個人が所属する属性ごとの統計的な平均値に基づき、推測された結果 として不平等な状態が生じること。
※代理変数:測定が困難であるもしくは利用できない他の変数の代わりとなる変数のこと 。
社会的文脈における移民と差別の要因:ラテンアメリカ15か国からの実験的 証拠
著者: Carlos Gomez-Gonzalez,Gwen-Jiro Clochard,Helmut Dietl,Juan Cruz Duhalde
原題:
Migration and Sources of Discrimination in a Social Context: Experimental Evidence from 15 Latin American Countries
Journal of Development Economics,1791036332026
問題赤:どちらを選びますか?
(a) Box Kから1個引かれたボールの色が緑だったら1000円、黄色だったら0円獲得。
(b) Box Uから1個引かれたボールの色が赤だったら1000円、黒だったら0円獲得。
問題黒:どちらを選びますか?
(a) Box Kから1個引かれたボールの色が緑だったら1000円、黄色だったら0円獲得。
(b) Box Uから1個引かれたボールの色が黒だったら1000円、赤だったら0円獲得。

図1:考案した実験課題

本論文では,曖昧性下におけるランダム支払法の性能を実験的に評価した.ランダム支払法とは、実験参加者が複数のタスクで意思決定を行い、そのうちランダムに選ばれた一つのタスクに基づいて謝金の支払いが行われるという経済実験で用いられる標準的な報酬支払法である.しかし,参加者が曖昧性に直面する実験においては,ランダム支払法を用いても真の選好は抽出できない可能性があることが理論的に指摘され、また、Baillon et al (2022, Econometrica)の実験結果は、そのことを実証した。本論文の実験では独自にデザインした選択問題(図1)における参加者の選択が報酬支払法に応じて変化するか検証すること、そして、Baillon et al. (2022)の再現実験を実施することで、ランダム支払法の性能を評価した.
本研究の主な結果は以下の二つである.第一に,独自にデザインしたオンライン実験とラボ実験のいずれでも,ランダム支払法が抽出される選好を歪めるという証拠は見つからなかった.また、Baillon et al. (2022)の結果は再現されなかった。以上のことから、ランダム支払法が抽出される選好を必ずしも歪めるわけではないことが示された。
曖昧性下におけるランダム支払法の性能評価
著者: 青山知仁,花木伸行
原題:
Experimental Evaluation of Random Incentive System under Ambiguity
Journal of Political Economy: Microeconomics

Research Highlights

Eugene Malthouse,
Charlie Pilgrim,
Daniel Sgroi,
Gwen-Jiro Clochard,
Nobuyuki Hanaki,
et al.
Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS),
123
(12)
2026
DOI: 10.1073/pnas.2504632123
A Behavioral Explanation for the Puzzling Persistence of the Aggregate Real Exchange Rate
Mario J. Crucini,
Mototsugu Shintani,
Takayuki Tsuruga
Journal of the European Economic Association,
forthcoming
Junichiro Ishida,
Wing Suen
International Economic Review,
forthcoming
DOI: 10.1111/iere.70066
Anna Dreber,
Taisuke Imai,
et al.
Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS),
122
(39)
e2508519122
2025
DOI: 10.1073/pnas.2508519122
Carlos Gomez-Gonzalez,
Gwen-Jirō Clochard,
Helmut Dietl,
Juan Cruz Duhalde
Journal of Development Economics,
179
103633
2026
DOI: 10.1016/j.jdeveco.2025.103633
wani-hakase
The university of osaka
社会経済研究所
The University of Osaka
〒567-0047 大阪府茨木市美穂ケ丘6ー1
©2026 Institute of Social and Economic Research, The University of Osaka・Photo by Shinya Yamada